オランダのギーセン焙煎機W1Aは、その小型ながら卓越した性能によって、コーヒー愛好家や自家焙煎店の間で高い評価を受けているマシンです。私自身この焙煎機を使い始めて1年以上経ちますが、小型機としては他の追随を許さないハイエンドマシンだと感じています。ここでは実際に使っているユーザー目線での紹介です。
W1Aは、1.5kgの焙煎能力を持ちながらもコンパクトなサイズで、小規模な店舗でも理想的な選択肢です。この小型機が持つパワフルな性能は、豆の均一な焙煎を可能にし、優れた品質のコーヒーを追求する上で欠かせない要素となっています。釜とサイクロンを同一筐体内に格納する構造となっており1.5kg機の割には大きく感じます。
W1Aには純正のプロファイラーを接続することにより、焙煎方法が劇的に変わります。プロファイラーは、焙煎プロセスの細かな制御を可能にし、温度や時間の微調整を行うことでコーヒー豆の風味や特性を最大限に引き出します。これによって、焙煎士はコーヒーの味わいに対してより繊細なコントロールが可能となり、個々のコーヒー豆の個性を最大限に生かすことができます。
ギーセンW1Aと純正プロファイラーの組み合わせにより、焙煎士は独自の焙煎プロファイルを作り出し、豆の特性を最大限に引き出すことができるようになります。豊かなアロマや深い味わいを持つコーヒーが、ギーセンW1Aと純正プロファイラーのダイナミックなコンビネーションから生まれるのです。
また、ドラムロースターでありながらエアロースターのような焙煎も可能です。ドラムロースター(半熱風機)は伝導熱:対流熱による焙煎が主だと言われますが、条件をつけるとこの比率が変わってきます。熱伝導が2で対流が8だとも言う人もいますが、ギーセンW1Aのようにドラム回転、排気風量が大きく変動できる機種の場合は対流による割合を増やしたり、伝導による割合の増減を自在にコントロールが可能となります。つまり対流熱を強めにし伝導を弱めにしてフレーバーを立たせたりその逆でフレーバーあるいは酸味を抑えて甘みを強調したりできるということです。具体的にはバーナー要素以外での焙煎時間の変更が可能です。変えた場合の温度やRoRの変化がモニターを観察しているとリアルタイムに確認できます。
再現性とプロファイリング焙煎について
焙煎の世界において再現性というキーワードがしばしば登場します。要は過去に成功した同じような焙煎で豆を焼くこと。焙煎記録表を記していた時代を経て近年ではプロファイラーを用いる焙煎士がほとんどだと思います。アルチザンのように単に見るだけのロガーソフト以外に、パソコン上で全て自動制御可能なクロップスターやギーセン純正プロファイラーなどに代表されます。
例えばW1Aでエチオピアの発酵豆を釜容量の半分以下の3-500gでうまく焙煎することは慣れていないと難しいのですが、過去の焙煎データをロードし、プロファイリングモードで自動焙煎したところ、ほぼ同じ曲線で同じタイミングでのボトムとドライング、ファーストクラックのポイントでした。次の写真はドライングフェイズを通過し、ファーストクラックを目指して焙煎進行している様子です↓。
自動制御焙煎が完了した写真。ほぼ正確に同じハゼのタイミング↓。
以上のようにギーセンW1Aと純正プロファイラーを使用することで、焙煎士は豆の特性に合わせた最適な焙煎プロファイルを詳細に設定することができます。温度や時間、風量などのパラメーターを微調整することで、焙煎の結果を細かく制御し、コーヒー豆の風味やアロマを豊かに表現することができます。
回転数を変えた場合のドラム内部の様子
では実際にドラムが回転した時に豆はどのような動きをしているのでしょうか?ギーセンではありませんが興味深い動画を見つけましたので参考にしてください↓。
回転数を変えた時の釜内部の豆の様子が観察できる動画↓。
原理的に判断すると回転数が遅いと伝導熱の割合が多くなり早くなると対流熱の割合が多くなる理屈です。
日本の焙煎機やギーセンでも古い機種やW1Mといったマニュアル機種では回転や風量を変えることはできませんが、例えば富士の焙煎機などはダンパーで排気風量を加減できます。デードリッヒの場合はエアフローの割合で示しますが、実際はダンパー操作です。マニュアル機のギーセンW1Mはオプションでアンダープレッシャーをつけることによって排気風量を変えることができますし、富士ローヤルの場合は外部のエアクリーナーで強制的に排気の吸い込み風量を強くしたりインバーター制御機器の増設で変えることも可能です。
富士の焙煎機の場合はオリジナルの状態ではダンパーを閉めた時にわずかな隙間が出ますが、分解調整によって完全に締め切った状態にすると正圧の状態にできます。こうした調整が必要なケースとして、外部にエアクリーナーを増設した場合が挙げられます。
ギーセンW1Aでの浅煎り焙煎動画
この動画は2024年春のアップデート前のバージョンです。現在はプロファイラーのバージョンアップに伴い変更になっています。